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2006年5月13日 (土)

藤田嗣治展

藤田嗣治(Leonard Foujita)展へ行ってきました。
5月9日(火)の午前中とはいえ、会場内は超満員。
今月21日(日)まで、ということですが、この調子で最終日を迎えそうな勢いを感じた次第。
ゆっくり楽しみたいのはやまやま…しかし忍耐力のない私は背筋と首だけを伸ばし、人だかりの頭の向こうに見える繊細な絵の数々をさらりと流していくしかありませんでした。
それでも後半は山も落ち着いたので、心引かれる絵の前に佇む時間はありましたが…。
48riches_1Cafe_1

初めてレオナルド(フランス語式にはレオナール)・藤田の名を知ったのは、その昔、目黒の庭園美術館で藤田展が開催されていた時。
当時私は大学生、「カフェにて」の何でどうやって描いたのか不思議な女性の肌色と輪郭線、絵画全体の雰囲気(西洋画でも日本画でもないような)がただただ不思議で一気にフジタの世界に引き込まれてしまいました。
あの時は会場もゆったりとして(人が少なく)、数少ないフジタの作品をひとつづつ丁寧に見ていった記憶があります。
作品そのものでインパクトがあってよく覚えているのはやはり「カフェにて」でした。
当時もチラシに使われていたから、というのもあるかもしれません。
が、近くでじーっと、油彩のはずなのににじんだ画風や雰囲気そのものに魅入り、かなりの時間をその絵の前で過ごしてしまった気がします。

庭園美術館には大学時代よく通っていました。フジタ展は最も印象深い展覧会のひとつでした。

今回の展覧会は、絵と人生がともにあったフジタの歩みを網羅する、重要な展覧会だといえます。
模索の時代から「快心の作。デングリ返しを打ちて喜びたる」と裏書きした「巴里城門」を経て有名な乳白色の肌と墨色の輪郭線、中南米旅行から日本再発見、大戦、再びパリへと戻り、描きたい物だけを描いていくフジタ。子供たち、動物たち、乳白色への回帰、そして独自の宗教画の世界。

フランス人となったフジタは、身の回りの物まで器用につくっていたとのことで、彼が縫った帽子、お皿、木箱なども今までに知らなかった彼の一面を見せてくれます。
連作「小さな職人たち」や「フランスの富」からも、本人が楽しんで描いた様子が伺えます。
(なぜか、牡蠣huitreをhiutreと彼は書いてましたが…)
でも、個人的に最も印象深かったのは、黒い血を流すキリストでした。
黒い血で宗教画を描く画家が今までにいたかどうか…青い衣が目印のマリアもまた、黒い衣をまとっています。
ここに、フジタはどんな思いを込めたのでしょうか。
その絵が描かれたのは、第一次世界大戦と第二次世界大戦の狭間のことです。

絵画と一緒に、天真爛漫で素朴な彼手作りの額縁の数々もまた見物。
ちゃんと「Foujita」とサインが刻み込まれています。

実は私も、フジタがまだ生きている時にフランスで生まれたのだと思うと何か感慨深いものがあります。
(まだ、その頃はピカソもパリにいたのです…時代は変わる)
繊細な描線と、彼自身がポーズをとった写真には、終始一貫したものを感じますが、ディテールをおろそかにしない日本人的几帳面さとフランス的諧謔を併せ持つ絵画の数々に魅了される人たちは今後も増え続けることでしょう。

「巴里城門」は1914年の作。
本人が快心の作、と記したこの小品は、ほとんどの人が足を止めずに通り過ぎていきました。
でも、この中に、彼の「乳白色」の下地と思えるような塗り重ねと、彼独特の(と私が個人的に思う)「停止した時間の中の静かな空間」が現れています。
その作品から約50年もの間、フジタは絵を描き続けました。

「芸術は長く、命は短い」
この言葉は、「人間の命は短いが芸術作品は長く残る」という意味に、日本では誤解されているようです。
本当は、
「一芸を真に極めるには、人生はあまりに短すぎる」
という意味の、ラテン語のことわざ。
レオナルド・ダ・ヴィンチを敬愛したというフジタにも、このことわざが心の片隅にあったかもしれません。
Hiutres
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