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2013年3月25日 (月)

H25年大相撲春場所千秋楽:日馬富士中心に振り返る

千秋楽結びの一番の取組動画はこちら

横綱土俵入りでも、前日一睡もできなかったのではと思うような顔色だった東横綱。その姿を見ただけで、思わず涙目に・・・。
最後の四股も、上げた左脚が宙でぐらつく。
負けていても力士のトップとしてお客様に見せなければならない、たった一人での土俵入り。
横綱とはなんと酷な地位なのだろうか・・・。
土俵の神様は、不屈の魂を持たぬ者には容赦ないのだ。
いや、屈する屈しないではなく、それをはるかに超えた境地に達することができるのか否か。

「無心」ということの重みと大切さをひしひしと感じる横綱土俵入り・・・。
「無心」ほど全てを超越するものはない。
神は無心ゆえ、偉大なのである。
善も悪も、恐れも喜びも、神の中には存在しない。そのような人間の瑣末な世界を、神は「無」で全てを押し潰し、まっさらにしてしまう。

四股は、その象徴ではないかと自分は思う。
だから四股に人間の迷いを持ち込んでは、地の邪悪は消え去ることはない。
無心の四股が踏める者だけが、真の横綱なのだ。

私は、日馬富士の土俵入りが大好きだ。
そこには、敬いの心があるからだ。
でも、この横綱にはさらにそれを超越した土俵入りを期待している。
いずれ、そんな姿が見られる時が来るだろうとも信じている。近い将来に。
今は、その通過点なのだ。
東横綱の洗礼を受けたばかりの春場所を、「横綱の汚点」と人は言うかもしれない。
言わせておけばいい。
これでやっとゼロ地点に立ったのだ。
あとは真の高みを目指していくだけなのだ。
その日を心待ちにしている。
人間にとっては、あらゆる経験のみが、高みを目指すために不可欠なのだから。

・・・十四日目と同じく、千秋楽の伊勢ヶ濱部屋の面々は快進撃。
幕下の照強は大きな諌誠を下手投げで下し、6勝1敗で自己最高位の場所を終え、十両の誉富士は幕内最初の土俵で圧倒的な威力を見せての10勝目。宝富士は押しの富士東を受け止めてから前に出て11勝目。安美錦はすでに負け越しが決まっていたとはいえ、魁聖を送り出し7勝8敗で場所を終えました。

安美錦登場前から、幕内後半戦での交代で正面土俵下に控えるは、彼らが師匠・伊勢ヶ濱審判部長。
整い過ぎというくらいに整い過ぎの舞台。

時が過ぎ、「これより三役」。
四股を踏んでから、土俵上をくるりと回るいつもの日馬富士の姿はなかった。
いつもなら盛り上がっている肩の筋肉にも、漲る力なく。

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そして土俵下に控えながら、何度も顔を覆うように手のひらで汗を拭う日馬富士を初めて見ました。
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制限時間一杯での立合い、しゃがんでから土俵上でも再び同じように汗を拭う東横綱。
今まさに死刑宣告を受けんとする被告の姿とはこういうものなのか。
見ているほうも気が気ではない中、手をつこうと前のめりになった上体から出た腕がガクガクっとなり、そのまま平蜘蛛仕切りになってしまう日馬富士。
その様子を見ていた白鵬、日馬富士が立てない気配をいち早く察して、すでに右手は引っ込めじっと相手を見つめていました。
昨年にやはり立合いで立てず、仕切りポーズになってしまった時とは全く違う緊張感が漂う場内。

気を取り直して二度目の立合い。
白鵬が珍しく、体を丸めて両手をしっかりついての立合いポーズ。
両者が立つと、今場所のこれまでのようなスピードでは左手を差し出さない白鵬。その白鵬の左を跳ね上げて先に右上手を取った日馬富士。白鵬、左下手となってしまい両者組み合ってから日馬富士が西へと寄り立てる。しかしそこを下手で日馬富士を揺さぶり、土俵を回り込みながら正面でこらえる白鵬。腰を振り、日馬富士の左下手を切って半身でこらえると、両者膠着状態に。しかしそこから先手を打ったのは白鵬、日馬富士の左わき腹を叩いて相手の体を反応させてから、間髪いれず右下手を差し込もうとする。それを嫌う日馬富士が、白鵬の左下手投げで右足を大きく泳がせつつ左足だけで前のめりになりながらの差し手争いに。日馬富士が勝ち、左を今度は白鵬の廻しの結び目近くに深く差し込む。しかしついに白鵬が右下手に巻き替え左上手、両者がっぷりになるとどんどん腰を沈めていく白鵬。十二分に日馬富士の腰を沈めると、そこから力強く低い横吊りで日馬富士を白房下まで攻め込み、左足だけで土俵際こらえる日馬富士を左上手で土俵外へ置くように上手投げ。痛そうに左膝に手をやり、上を仰ぐ日馬富士・・・。

日馬富士にはこれが今場所精一杯の内容。
終始、こらえられない左足ばかりに負担がかかっていたのが、ものすごく気がかりです。
日馬富士が右上手で攻めきれない時点で(そして日馬富士も、白鵬を寄り切ることは至難の業だと以前からわかっている)、白鵬にもいくつか勝機があった。
立合いといい、取組途中と言い、一種人情相撲に見えなくもありませんでしたが、結果的には一分近い長い相撲をとることで、日馬富士を完全に疲弊させた内容になりました。
というよりも、「白鵬ここにありき」の相撲を見せつけるための材料となってしまった日馬富士でした。

でも、じっくりと相手を料理する白鵬の中には、無言のメッセージを感じた。
「もう一度、元気な姿に戻って土俵に上がってこい」というメッセージ。
最高位の者から最高位の者へ、上がった者にしかわからない苦しみを分かち合うような白鵬に泣けました。
でも、やっぱり日馬富士のためにもっと泣きました(苦笑)

白鵬はやはり凄い。
「横吊り」という言葉さえ、全く出てこない今の大相撲。
大鵬と柏戸の横吊りの応酬に代表されるような、手に汗握る昭和の相撲がずっと今の時代にも見たいと思っていました(と、観戦歴5年で偉そうに言えた立場では全くありませんが…)。
残念ながら、吊る相手が全く下半身がこらえられなかったために、昭和の片鱗しか見られなかったのではありますが・・・。
白鵬、これからもぜひこういう相撲を見せてほしい。
四股をしっかり踏んでいなければできない相撲に立ち返る角界を、作り上げていってほしい。

折しも、「最近は引き・叩きばかりだ」と幕内でも北の富士さんが苦言を呈していたところで、この結びの一番。
相撲界を盛り立てるには、こういう内容が必要なのだという気がします。
千秋楽に実にふさわしい、しかも史上最多の9回目の全勝優勝を飾る、素晴らしい相撲内容でした。

「『押さば押せ、引かば押せ』が、今じゃあ『押せば引け、引けば引け』になっちゃったもんなあ」という北の富士さんの言葉は、とてつもなく重いメッセージです。
力士の皆さんが本当に頑張らないと(特に、勝昭さんは嘆きながら名指ししてましたね・・・「そこに日本人横綱の素材があるんだから」と。敢闘賞のキミだよ、キミ)、お客さんは正直ですからあっという間に遠のきます。
若いうちにしか出来ないことをやらずしてどうする。その後の人生のお楽しみなど、実に薄っぺらいものになるだけです。
頼むから、皆が気持ちの強い力士に育ってほしい。
現代日本人の気持ちの弱さと「なんでも簡単に手に入る時代」の安直さが、引き・叩きに表れていると私には感じます。
だから、かつての土俵を知っている親方衆が口をそろえて「四股を踏め、テッポウをせよ、ぶつかり稽古が足りない」と言い続けている。
その大切さに気付いた頃には、時すでに遅し・・・なんてことにならないよう、悔いのない若者時代を過ごしてほしい。

と、話は逸れましたが。

場所後の情報で、日馬富士は三日目の高安戦で左足首を痛め、九日目の把瑠都戦で右膝(※しかし記事により左膝とある。どっち?両方ですか!?どう考えても左じゃないかと思ってたけど…)を痛めたと知りました。
下半身あってなんぼの相撲で、横綱が休場せずに千秋楽まで闘ったのは良かったのか悪かったのか、私にはわかりませんが、本人が出場すると決めたからには勝ち続けねばならなかった。

こういう場所は、今回限りにしてほしい。いや、今回限りにせねばならない。

より一層、五月場所は厳しい状況に追い込まれますが、どうか殻を脱ぎ捨てて「気持ち・気迫の横綱」を再び見せてほしい。
日馬富士には心からエールを送ります。
私の気持ちは、大阪府立体育会館でいつも大声で叫んでいた子供と一緒です。

「日馬富士大好き!明日もがんばってね!」

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