ラファエロ展&空想の建築―ピラネージから野又穫へ―展
ラファエロ展に関してははすでに最終日に長蛇の列に並びながらガラケー投稿してましたが・・・入場前のことしか書いてないので、あらためて簡単に記録を残しておこうかと。
JR上野駅を出たら、すぐ国立西洋美術館手前(美術館を前にして右側)にあるチケット売り場でチケットを購入。
6月2日(日)最終日ということで、その列たるや想像を絶するものがあったのですが(敷地外の左手、国立科学博物館ギリギリのところまで列が・・・しかも2つに折れ曲がって)、自分が並び始めた9時20分頃には列はどんどん動いて行き、なんとか入館までこぎつけるとロッカーに荷物を預けるのもやめて、即目指すは最後の展示室の最後の作品。
それでも入口のラファエロ自画像ですでに詰まっていて、なんとかすり抜けると、展示室や階段を通ってウルビーノ焼きとラファエロから影響を受けた後世の画家のセクションまでとにかく作品数を確かめつつまっしぐら(笑)
そこからは、人がかたまっていない場所を選びながら逆行していき、見たいものはそれなりにじっくり鑑賞。
前日の垣添引退相撲の後は東京の祖母の家に泊まらせてもらっていたので、荷物の中には双眼鏡もあり。
入口のほうへと戻って行くごとに人だかりがすごく、モノによってはその双眼鏡を駆使しながら観賞(垣添ちゃん、ありがとう笑)。それでも、生の目で見るのがやっぱりいいですね。
そうして振り出しに戻り、あらためて流れを観賞していきました。全体を把握したことで気持ちも楽になり、自分の目の前に二列あっても見られる絵は相応の距離からも十分楽しめました。
イタリアにいる時も、それほどラファエロに惹かれるわけでもなかったのですが、それはおそらく今でもそうで。
そんな中でも、魅入った作品が2点。
ウッフィーツィ美術館の「エリザベッタ・ゴンザーガの肖像 Ritratto di Elisabetta Gonzaga」と、ホーン美術館の「ムーサの頭部 Testa di Musa」。
もちろん、目玉の「大公の聖母」は素晴らしかったのではありますが・・・。
(↑実に立派なチラシ)
赤外線写真やX線写真で背景の黒い部分には窓が描かれていたこと、下絵がスポルヴェロ法で描かれていたことがわかったという説明パネルもありましたね。
スポルヴェロで描いたということは、全く同じ下絵で描かれた複製絵が存在してもおかしくないのかな?とか考えたりして。
ウルビーノ出身の彼が描いたエリザベッタ・ゴンザーガの肖像には私の大好きなピエロ・デッラ・フランチェスカの流れを感じ、「ムーサの頭部」は素直に堪能し。
彼が有名になりもてはやされるようになったのは、教皇や招待客しか目にすることのできない壁画や絵画をエッチングでヨーロッパじゅうに広めたことが大きいことも知りました。(って今更・・・何を勉強してきたんだろうな自分も^^;)
作品そのものとは別に、栗原類のような雰囲気を醸し出す肖像画からは想像できないような(w)やり手で社交家・野心家だったラファエロ(ラッファエッロ)の人物像が浮かび上がって来る展覧会。そんな意味でも興味深い展覧会でした。
イタリア屈指の大御所である先代が数多く存在したからこその画家。そういう人なのでしょうか。もちろん誰もが歴史の中で必ず誰かしらの影響を受けているとはいえ・・・要領よく噛み砕いてぬかりなく広告を行い。37年の生涯が、もし倍になっていたら・・・どんな絵を描いていたのだろう?
↑ところで、日本初だったんですか!?ラファエロ単独の展覧会って(@_@;)
(チラシの裏面)
確かに、ルネッサンスという括りでしか来日していなかったのかも?
こんな恐れ多い作品を、よくぞこれだけ権威ある美術館が手放す勇気を出してくれた、と正直思いました。日本だからこそ許されたことなのか。いや、すごい・・・美術を愛する国々に感謝・感謝ですね。
ラファエロ以外には、ホッとするような可愛らしいピントゥリッキオの絵(「幼児洗礼者ヨハネと聖母子」シエナ絵画館蔵)と、ジュリオ・ロマーノの「聖母子」(ウッフィーツィ美術館蔵)の肝っ玉母さん風の雰囲気に惹かれました(笑)
クリアファイル好きなので、観賞後は一枚購入。表と
裏。
チラシの表はこちら。
展覧会の最終日には決して足を運ばない、と誓った日でもありました^^;
外に出たところ。
だいぶ列は落ち着いてきてはいましたが・・・それなりに並んでたのには変わりなし。でも写真では上手く雰囲気を出せません。
↑朝一番はこれ全部埋まってた可能性あり、ですね。
さて、日付と所は変わって、昨日のこと。
「空想の建築―ピラネージから野又穫へ―」展が開催されていた、町田市立国際版画美術館へ。
大阪の友人が「ピラネージっていうからどこどこって!東京じゃ無理!代わりに行ってきてよ」と泣き言を言ってきたので開催内容を見て見たら、ありゃこれは見るべきか!と急遽行ってきました。全然知らなかったので友人には感謝。
美術館ホール。贅沢な作りです。市とはいえ、さすがは東京・・・。仕様が違う。
展覧会が開催されている二階から下のホールを覗きこんだところ。
ナポレオンが150名を超える学術調査団を同行させて遠征したエジプト。その実地調査成果を国家事業としてまとめた「エジプト誌」の版画の緻密さと迫力(そもそもサイズも大きい)。
空想も交えながら描かれた宮殿や、まだ頭しか出ていないスフィンクスなど・・・そしてもちろん、科学的な図面も。こういう図版を900点も作成したとは。20年近くもかけての国家事業ですよ。フランスという国の、文化に対する懐の深さ・・・文化より経済に流れるどこかの国には、こういうところを真似してほしいというのかw
↑これだけじゃ雰囲気がわかりにくいんですが^^;
現代作家の3D立体空想構造物や、石版画によるピラミッドモチーフなどの作品群を見て、次には奇想天外な建築物が描かれたピーテル・ブリューゲルの一枚の版画。これがまた、500年前に描かれたとは思えないような(我々の時代の近未来アニメを見てるんじゃないかと錯覚)ユニークさで、決して大きくはない絵なのですが暫し魅入ってしまいました。
壁にかかったその版画絵の手前に、フランチェスコ・コロンナの空想モニュメントの版画が挿入された本があり、その中のひとつがオベリスクを背に載せている象。
ローマのミネルヴァ広場にあるベルニーニのあの像のオベリスク像は、ここから来てるんだろうか・・・?
そしてピラネージ。超巨大な図版は、ローマのカンポ・マルツィオ空想図を描いたページを開いて展示されており。有名な「旧アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点」もあり。
↑あり得ないアッピア街道の風景(笑)
見たことのないタッチのピラネージもあり、新たな発見。
古代ローマの想像地図、面白くて延々立ち止まってしまう。
シンケルなどの舞台美術用空想建築画も興味深く拝見し、いよいよ現れたのが大きなアクリル画がいくつも飾られた広い展示室。
野又穫氏の空想世界。
これが、どれを見ても衝撃的でした。衝撃というのか・・・なんと表現していいのかわからない。
ウルビーノの国立マルケ絵画館にある、15世紀ルネッサンス時代の謎の「理想都市」、ピラネージ、ルネ・マグリットの世界・・・そんな雰囲気を感じるけれどもユニークな世界。
600年の蓄積を経て今再構築された、日本人の感性による独特の空想建築。
人は描かれていないけれど、描かれている構造物そのものに不思議な息遣いが感じられる。
巨大な建築物が立つ周囲の雰囲気が、さらに主役を引き立たせ、さらに不思議さを醸し出し。
合わせて、無料で見られる野又氏のドローイング展も開催されていたのですが、「朝日新聞へ掲載されていた」との説明があり「そういえば・・・」と思ったものが何点か。
ドローイングもこれまた魅力的だった・・・。
2013年時点で未完の作品も最後のほうに数点飾られており、そのうちのひとつがどう考えても先のピラネージの「アッピア街道・・・」のパロディ。
左手前、ローマの狼の代わりに犬が何匹もいたり・・・(笑)
あの絵が完成したものを見てみたい。途中経過のぼんやりした輪郭と色が見られるのも興味深い展覧会でした。
もともとはピラネージ見たさに足を運んだ展覧会だったのに、何も知らずに行った分というのか、野又氏の作品にすっかりのめり込んでしまった。
またこういう機会があれば、野又ワールドを堪能してみたい。
ところで、昨日は暑かった。
しかも、国際版画美術館は町田駅から徒歩15分の距離。
しかもしかも、道を二度間違えた(どれだけいい加減な歩き方を^^;)。
すっかり疲弊し、お昼も13時を大幅に過ぎていたので、展覧会を見る前に美術館隣接のカフェで薬膳カレーをいただきました。カレーの写真はありませんが、窓が広くて開放的な中の様子。
席もゆったりしています。ちょっとテーブルが低くて、食事をするには少々体勢がきつかったかな。
「いらっしゃいませ」というのに全然おばちゃんたちがこちらを見ていなくて。
「すみません」と言ったり手を振っても、誰ひとり気付かず仕方なく歩いて近くで「メニューください」と言うはめにw
やっとメニューとお冷をもらい、カレーが来たら今度はお茶とコーヒーが出てきた(笑)
日本は恵まれておりますね。(もちろんコーヒーはセットメニューですが。)
↑この窓の向こう、奥には家族で楽しめそうな公園が広がっているようです。観賞後はもう気力が残って無かったので・・・またの機会に歩いて見たいな。
なお、鳥が飛んでいるように見えるのは、窓に貼り付けたフクロウのステッカーです(たぶんフクロウ)。
それから、観賞後にロッカーに預けた荷物の鍵を探していたら・・・鍵が見つからなくて。
もしや、とロッカーに行ってみたら!鍵をかけ忘れてるΣ( ̄ロ ̄lll)
もともとそこの無料ロッカーに誰かが百円玉を忘れて行ったらしく、そのままそれを利用して鍵をかけたんですが・・・
その百円玉だけが無くなっていた^^;
百円玉に感謝するべき?
自分もすっかり平和ボケに染まってしまったなあ・・・(二度とイタリアでは住めない)。
美術館を出てすぐの帰り道は急な上り坂で、きついんですよねw
でも、外の風景を見ていたら、なんだか野又ワールドの延長を見ているような気分になりました。
それって、野又氏の作品が空想であって空想ではないような、そんな確信をもたせるようなものだったのかもしれないな、と。
美術鑑賞後に現実世界が違うものに見えてきたのか・・・
ちょっと、面白い発見がありました。発見と言うのか不思議な感覚に陥ったと言うべきか。
こういう日本だから、野又ワールドが自然と生まれたのか?
この世は不思議にあふれております。
町田市立国際版画美術館の企画展は、6月16日(日)まで。
行ける方は是非!とてもオススメです。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
美術館に双眼鏡! 目からうろこでした! (まあ、地方ですと双眼鏡が必要なほど込み合うことはあまりありませんが^^;)
ラファエロ・・・確かに栗原類くんに似てますね!気づかなかったなあ。
単独展覧会も初めてとは!
町田市の美術館もステキですね。内容はよくわかりませんが^^; 久しぶりに美術館でゆっくりしたくなってきました( ^ω^ )
投稿: まーがりんろーる | 2013年6月 9日 (日) 15:08
ろーるさん、双眼鏡なのかオペラグラスなのかはわかりませんが、これが私だけじゃなくて結構な数の方が手にしてたんですよ・・・^^;
それを見て私も取り出しました(笑)
記事を書いてるうちに「これって・・・類くんだよね?」と、もはや類くんにしか見えなくなりwww
それにしても単独が本当に日本初なのか、未だに疑問ですw
町田市の美術館は前から行ってみたいところだったんですよね。緑もいっぱいでいい所でした♪
内容は・・・興味のある人・無い人分かれるかもしれませんね。入場者数はラファエロ最終日の1時間分が会期中に入ったか否かぐらいだったりして・・・^^;
投稿: 蒔右絵門 | 2013年6月 9日 (日) 16:25
ラファエロ展、大盛況だったようですね!
しかも、クリアファイル素敵です♪
○○展と付くものは、関連グッズを見るのも楽しいものですよね☆
上野といえば、今年2月に「書聖 王羲之展」を見に行きました。
内容だけに、やはりご年配の方が多かったのと、一文字一文字見るとなると、立ち止まってる時間が自然と長くなる・・・あまりに人が多いところはさくっと流しちゃいました(^-^;
山形美術館行った際は、貸切か?!ってぐらいゆったり見れて、居心地最高でした♪
カテ違いですみませんが、スタンプの件です!
スタンプ台は、回向院の社務所入ってすぐ左手にあります。
しかし、台が狭いのと、スタンプが大きいので(当たり前w)一発で綺麗に押すのは難しいかも・・・実際、失敗しちゃったしw 台紙は複数枚の持参をオススメしますw
あと、押した後、乾くまでカバンにしまえないという・・・。チラシや新聞、何かしら台紙を挟めるものがあると便利ですね!
というか、行く前に気づけよっていうレベルの話で申し訳ないのですが(^-^;
思い立ったが吉日がモットーというか、行き当たりばったりの方がしっくりくるなwww
投稿: うらら | 2013年6月 9日 (日) 17:23
うららさん、大盛況すぎて面食らいました^^;
クリアファイルは「R]の形の中に内側の絵の部分が見えるようになっているので、3か所に分けてドキュメントが入れられるようになってます^^
グッズはつい確かめちゃいますねw
書の展覧会は時間かかりますよね・・・以前、冷泉家の展覧会を見た時は確か3時間以上かけて見てましたよ^^;
今回は時計を見たら1時間ぐらいだったので、自分でも「ええっ短い?」と不思議でしたwww
平均的に2時間ぐらいかけて見る事が多い私です。
山形美術館!未知の世界です。地方の美術館や、東京でもこじんまりした美術館は、ゆったり見られていいんですけどね・・・大規模な企画展こそ招待券配布をやめてほしいかもw
(やめても混んでることには変わりないか)
スタンプの件、ありがとうございます。原寸大と聞いた時点で「こりゃ押すのきっと難しいよね」と思ってたので、もちろんお試し用紙も持って行きますよ(≧m≦)
でも乾きが遅いというのは考えてませんでした。感謝です!
・・・私が行くまでに台が広くなっていればいいんですが・・・(笑)
投稿: 蒔右絵門 | 2013年6月 9日 (日) 20:27