絵の力
人とのご縁とはつくづく不思議なものだと、年齢を重ねれば重ねるほど思うことが多くなります。
何十億と人間がひしめき合うこの地球上で、どこでどんな拍子で貴重な出会いが待ち受けているのか・・・こればかりは予測がつきません。
悲しい別れも、生きる時間が長くなるほど増えていきます。
でも、一つの別れがあっても、その次にはまた出会いがやってくる。
ただ生きるということが、どんなに貴重なことなのかと・・・何かを経験するたびに、感謝するのみというのか。
・・・ちょっと天気も悪いし湿度も高いしで、湿っぽくなってますかね(笑)風は相変わらずうねりまくっている19日の午後。と思ったら風は少し控え目になり、ついに大きな雨粒の音がし始めました。
そんな貴重な出会いが人であれ、ものであれ・・・
出会った瞬間から、自分の心に恐ろしい化学反応が起こることがあります。
まさかの出会い。
「画集 日馬富士」。
ずっしりしたこの本を手にした(目にした)瞬間に、心臓が早打ちし始めました。
そしてページをめくればめくるほど、自費出版をされたこの方の日馬富士関への愛情が、とてつもなく大きく深いものだということが心に迫るほど伝わって来て・・・
日馬富士の相撲は、こんなにも美しいものなのか。
写真では表現できない日馬富士の一瞬の躍動とは、こんなにも人に訴えかけてくるものなのか。
途中から涙目になっていましたが、最後のページではたまらなくなってしまって。
作者名はここでは伏せますが、ご本人の承諾を得て、少しご紹介させていただくことにしました。
長年大相撲のファンであった作者。
立てばとたんに落ちる淡白な相撲ばかりでつまらなくなってしまった2003年、2004年、作者はもはやラジオでテレビ中継を聞くのみとなってしまっていた。
そこで彗星のように現れたのが安馬。2005年のこと。
鬼気迫る稽古風景をテレビ画面で目の当たりにし、衝撃を受けてからは、安馬の相撲の面白さ、美しさ、凄さにのめり込み、録画テープが擦り切れるほど取組映像を見ているうちに、スケッチをし始め、色鉛筆で仕上げて行くようになったのが2007年頃のことだった。
(左:2009年名古屋場所 対稀勢の里戦 寄り切り/右:2008年三月場所 対稀勢の里戦 押し倒し)
1年経って数えてみたら、出来上がった絵はちょうど100枚になっていた。
安馬が現役でいるのはあと10年ぐらいと考えれば、1年100枚×10年=合計1000枚。
その中から100枚を選んで発表しよう、と作者は思い立った。
(2009年初場所前 白鵬と三番稽古)
安馬は大関日馬富士となった。作者は全く飽きることなく彼を描き続けた。
その間、角界ではいろいろなことが起こり、10年の予定を8年で1000枚にとペースを上げる。あの場面も、この表情も・・・と、ただただ楽しく描いているうちに、2011年三月場所がついに中止に。続いて起きた東日本大震災。
1000枚描き上げる時間が続かないことを現実として考えざるをえなくなったが、5月の技量審査場所も『携帯大相撲』の小さな画面からスケッチを起こしていき、とにかく描き続けた。
(左:2010年三月場所 千秋楽/右:気合い)
そうして日馬富士は2011年名古屋場所、2度目の優勝を飾る。作者は翌九月場所でちょうど500枚を描き上げた。そこで絵をこの時点でいったん一冊の本にまとめることにした。
(2007年九月場所 対豪栄道戦 送り吊り落とし)
そうしてまとめられた一冊には、120枚ほどの絵が収められることに。
「生で見た記憶はどんどん霧のむこうであいまいになり、写真はどんどん『過去』の記録になっていく。けれど絵は決して『過去』にはならない。
レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉に「絵画とは、やがて滅んでしまう存在の美しさをとどめておくことができる、すばらしい科学である」とあるそうだが、この絵の中に1枚でも、写真やビデオを超えて、日馬富士の魅力をとどめるものがあれば、最高に幸せだ。
2012年 2月」
絵はどれもが魅力的すぎて、出来る事なら全部ご紹介したいぐらいなのですが、中でもなんと、私が初めて大相撲にのめり込むきっかけとなった2008年五月場所中日の国技館観戦のあの一番が4枚も描かれていて・・・まさに、運命の出会いでした。
そうです、あの対若ノ鵬戦の「うっちゃり」の絵が。
作者が500枚の中からこの一番を4枚も選んで挿入した・・・
私も、なんという日に安馬の相撲の洗礼を受けてしまったんだろうか。しかも生で。なんという不思議さ。いや、でも不思議ではないのかもしれない。
(2010年九月場所 対豊真将戦 裾取り)
勝つ場面ばかりではなくて。
(2010年九月場所九日目)
(仕切り)
(2009年九月場所前 宮城野部屋で)
(2009年五月場所 優勝決定戦前 支度部屋)
こんなこともあったな、あんな表情も・・・
たくさんの思いが、自分の頭と心の中にも駈け廻ります。
こうやって記事を書いていても、胸が締め付けられそうです(苦笑)
(2009年五月場所 優勝決定戦 対白鵬 首投げ~初優勝)
(2010年五月場所 対把瑠都戦 下手投げ)
(2011年五月技量審査場所十三日目 対白鵬戦 寄り切り)
この時はテレビで見ていたら、立合い直前にグラグラッと揺れて・・・白鵬が国技館のお客さんの様子を不審に思ったのか集中力を欠いているように見えて、気付けば日馬富士ペースになっていたんですよね。
(2011年名古屋場所千秋楽 対稀勢の里戦 二度目の優勝~しかし日馬富士全勝ならず)
負けてこの「やられた!」な笑顔があった名古屋場所。
ああ、もう、懐かしいなあ・・・(*´Д`*)
きりがないのです、本当に。見飽きることがありません。
そして、文章には全てふりがなが振ってある。この本にとって一番大切な人のために。
(2002年三月場所 三段目優勝)
一番最後の絵・・・
(2009年五月場所 初優勝の勝ち名乗り)
古今東西の名だたる画家たちの絵もこの1カ月、いろいろ観に行ってきました。
でもこの最後の一枚ほど、絵が愛情と完全に一体化し、ほとばしり出るものには出会えなかった。
もう、比較にならない。
作者が大関に贈る赤いハートと見まがうような座布団が舞う、国技館のワンシーン。
日馬富士関・・・あなたはこんなにもファンに愛されているのです。
そして、あなたが心から土俵の神様に感謝を捧げるその姿を、何年も前からファンはしっかりと目に焼き付けているのです。
「日馬富士関が これからも 何年も 何年も 元気に 活躍してくれますように」
私もそう願いながら、こんな素晴らしい出会いをつくってくれた横綱にあらためて感謝したいと思います。
横綱、本当にありがとう。
たくさんの人の想いが、横綱にこれからも届きますように。それが横綱の力となりますように。
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素晴らしい画集ですね!日馬富士関への愛があふれるほどにつまっていますね! 言葉はいらないなあ。すべてが物語っています。
何物にも代えられない出会いでしたね♪
投稿: まーがりんろーる | 2013年6月20日 (木) 13:53
綺麗・・・美しい・・・。
絵の力って凄いですね。
迫り来る躍動感。シンプルな絵の中に沢山の愛と力を感じます!!
「仕切り」の絵、今にも絵から飛び出してきそうな。ものすごい表現力です。
この本との出逢い、本当に素敵な出逢いですね(*^_^*)
今、武田葉月さん著書「横綱」を読んでいます♪
まだ読み始めたばかりですが、大変興味深く、力になる、ためになる言葉数々に感動してます。日馬富士関のお話も、今から読むのがとても楽しみです!
投稿: うらら | 2013年6月20日 (木) 14:37
ろーるさん、愛情が溢れ返っている画集です。
もう、私の愛のなんとチンケなこと><
全く叶わない、と心底思いました。
言葉よりもずっと深く雄弁な本との出会いに感謝です( ´;ω;`)
投稿: 蒔右絵門 | 2013年6月20日 (木) 18:41
うららさん、絵の力って凄い。
人間として生まれて大切なことって何だろうと考える時、私の中では音楽とユーモアと心は無くてはならない存在です。
心は誰にとっても大切なものですが・・・
心がそのまま絵に表れているこの本、素晴らしいです。
本物以上に躍動感が伝わってくるようで、きっと一生手放せません。元気を与えてくれる絵に出会えて幸せです。
そして、そんな本を生み出してくれた日馬富士という存在には心から感謝です・・・!!!彼なくしては生まれ得なかった本ですから・・・!!!
投稿: 蒔右絵門 | 2013年6月20日 (木) 18:47
うららさん、すみません「横綱」の本の件のコメント忘れてました^^;
最近、完全に広告塔になっちゃってますね私もwww
どの横綱にも、横綱にしか語れない言葉がたくさん詰まっていますよね(;´Д⊂
私は真っ先に日馬富士関のを読んでしまいましたが(w)、本当は順を追って読むのがいいのかもしれません^^;
投稿: 蒔右絵門 | 2013年6月21日 (金) 18:58
蒔右絵門さん☆
リプ、ご丁寧にありがとうございますm(__)m
実は父が図書館で借りてきて読んでました(^-^;
で、便乗w
あっという間に読み終えてしまいました。それぞれの横綱の言葉、重みがありますね。
広告塔♪『横綱』に限らず、そのおかげで私色々楽しい思いをさせて頂いてます(*^-^)
(貴婦人と一角獣も見てきましたよ!!6面タピスリー、異国に来た気分になってしまいました)
相撲博物館も行ってきました!
奥のテレビで、「ライバル伝説」という映像が流れていて、『横綱』に出てきた方たちの現役時代の映像を見ることができ、嬉しかったです☆
日馬富士関と把瑠都関のパネル(おそらく等身大)もありましたよ(*^。^*)
投稿: うらら | 2013年6月21日 (金) 22:10
うららさん、図書館に入ってたのですね。流石はお膝下、我々の田舎ではまず見つけられないかも…親子で大相撲ファン、羨ましい(笑)
もう読了されたのですね。展覧会も楽しまれたようで良かったです( ´ ▽ ` )
相撲博物館情報ありがとうございます!行ける日を楽しみにしてます!
(ハル様もそろそろ自前の化粧回しパネルがほしいところです~。ひょっとして新品お目見えかしら!?)
投稿: 蒔右絵門 | 2013年6月22日 (土) 10:31