日本相撲協会がことを重く受け止めているのならば
以前から思っていたことだし大相撲中継解説者も事あるごとに触れていたことだが、一人の大切な命を奪ってしまったということは、現代の角界における力士のあり方を今一度真剣に問うべき時期に来ているのだとわたしは考える。本当にこのまま力士の平均体重を増加させる一方で、果たして良いのだろうか?
とある相撲部屋では力士の半数が糖尿病を患っているという。20代〜30代という若さでこれは一般社会に照らし合わせれば、異常としか言えない事態だ。
食べなければ身体が作れない、を、履き違えていないだろうか?
事実、稽古で少しづつ体を大きくしていったいまの横綱たちに、内臓疾患は見られない。食生活には最新の注意を払い、極めて健康だからこそ、長く横綱を務めることができている(相撲スタイルや休場特権は別問題として)。
もちろん、地位が高くなればなるほど食の自由度が増えるという利点もあるのも角界の掟でもある。
しかし、もともと内臓が強く無い人も少なくは無いと思う。何しろ、人の何倍も食べなければならないという行為自体が、内臓に多大な負担をかける大変リスクのある行為なのだから、そこへ来て無理やり身体に詰め込むのであれば、食の内容をそれこそ吟味しなければ、身体は内臓から参ってしまうのは誰の目から見ても明らかなことだろう。
どんなことも専門外の一ファンが苦言を呈する話では無いが、しかしお金を払って大相撲を観に行く身からすれば(今はそれさえもできないが)、無駄に太りすぎて挙げ句の果てには大怪我する力士続出、デブデブドーンとぶつかって相手をすっ飛ばすだけの瞬間相撲ばかり、かと思えば動けないから相手を叩く、叩かれた相手は普段どれだけ稽古できてるか分からないほどあまりにも簡単にバッタリ落ちる、なんてことが繰り返される相撲などは正直観たくないのである。別に、デブデブドーンがいけないとは言わないが、あまりにも直線的な相撲が増えてしまったというのは極めて憂慮すべき事態だとは考えていないのだろうか?
客が見たいのは、丸い土俵をこれでもかというほど駆使して粘り強く闘い続ける力のモノノフの姿だ。強靭な足腰と磨き抜かれた技と心を持つ姿だ。
それを阻むのが、今の相撲部屋の食と稽古の内容ではなかろうか。
食も立派な稽古の一つだ。
その食をもう一度、見直してもらいたい。稽古とセットで。体重を増やせばいいなんてものでは無いことは、先に触れた通りだ。
勝武士さんを失ってしまったことが本当に悔しくて悔しくて、残念でならない。どうしてこんなことになってしまったのだろう。
あんなにも角界を明るくしてくれた若者が、何故こんなにも早く命を奪われなければならないのだろう。
ご両親やご家族、友人、そして師匠のお気持ちはいかばかりか。
そして部屋の協会員、協会員全体も、後援会も、ファンも誰もが今どうしようも無い深い悲しみに覆われている。
私も昨日から、自分の中に得体の知れない怒りと悔しさ、悲しみばかりが沸き起こる。
だから、書き残しておかないと自分も前に進めない。
どうか、犠牲になってしまった大切な命を無駄にしないで。
今一度、現代の大相撲の姿はどうあるべきかを根本から問い直してほしい。科学という強みもある現代を、利用し切って欲しい。
勝武士さんは、きっとその問いかけを私たちに教えてくれたのだ。
そう考えでもしないと、勝武士さんの魂が浮かばれないではないか。
私たち自身の心を救うためにも、皆さんどうか生き抜くための知恵を出し惜しみしないで欲しい。今考えずにどうする、というところにまで我々は来ているのだ。
コロナウイルスが常に問いかけているのは、我々人類の生き方が果たしてこの世に存在するだけの意味があるのか、ということだ。
私は「コロナが憎い」と言う人たちを信用しない。
我々はこの地球に対し、重大な責任を負っていると言うことを忘れてはならない。
そして、相撲は人間が生きていくために、八百万の神に感謝する神事とも切り離せない、ただのスポーツではない我々日本人の自然に対する願いと感謝の心を表す儀式でもあることを忘れてはならない。
もちろん、一人一人の力士はそんなことを考える余裕もないかも知れない。
しかし、今一度我々が何故この格闘技を千年以上も連綿と繋ぎ続けてきたのか、伝統というレベルにまで作り上げていったのか、もう一度じっくりと考えるべき時が来たのだと考えて良いのではないだろうか。
「お陰様で」生きていることを、今一度各人が自分の胸に手を当てて考えることをしようではないか。今を逃したらまた同じことが繰り返されるだけなのではないかと、世の中のことを危惧している。
勝武士さんは、日馬富士の引退相撲でも初っ切りを務めてくださった。
何事にも一生懸命だった一人の力士の命を無駄にはしたくない。
皆さんも自分と自分の大切な人の命を守ってください。
そして今だからこそできることをしていこう。
勝武士さん、ありがとうございました。
どんなに苦しくとも、あなたは最後まで真っ向勝負で闘い抜いたのだと確信しています。あなたのファンに対する素晴らしい応対も、私は決して忘れません。
今はゆっくりしてくださいね。
我々も命尽きるまで、この矛盾だらけの魑魅魍魎とした世界でなんとか生き抜いていきます。少しでも良い方向へと進めていくことを考え行動しながら。
先に別世界へ逝かれた皆さんとともに、我々をどうか見守っていてください。
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